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『Die Faelscher(ヒトラーの偽札)』、外国語映画賞を受賞

昨年のベルリン映画祭で見た
『Die Faelscher(邦題は、『ヒトラーの偽札』)』が、アカデミー賞の外国語映画賞に選ばれました!私が見た感想(といってもあまり書いてませんが……)はこちら→『Die Faelscher』

前回の『Das Leben der Anderen(邦題は、『善き人のためのソナタ』)』に引き続きのドイツ映画の受賞で、ドイツのメディアは湧いています。
しかし、その反面『ああ、またかー』
『結局、こういう映画が選ばれるんだよね』という反応です。
もともと、この映画がノミネートされた時から、外国語映画賞の選出の視点が偏っているという指摘がありました。選ばれるべき映画が、選ばれていないという、映画評論家の意見などが新聞に載ったりして。
アカデミー賞の裏側など、私はわかりませんが、個人的には面白くなかったので、へーそうかーという感じ。

でもこれを機会に、日本でもドイツ映画の上映が増えて、ドイツ映画が盛り上がると良いなあと思っています。
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by berlinbau7 | 2008-02-25 16:46 | 映画、だいたいドイツ

危ない洋服、続報。

2月3日の日記に書いた『危ない洋服』。
たくさんのコメントを頂き、嬉しいです!
日本でのドキュメンタリーのお話など、大変興味深く読みました。
また、当て字(?)のことも……。
ほんと調べ出したらいくらでもあるのでしょうね……。
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今日、たまたま用事があって、
Thor Steinarのある通りに出かけたました。
実のところ、すっかりお店のことは忘れていたんですが
てくてく歩いていたら、めちゃくちゃに窓ガラスが壊され
べっとりとペンキ(Farbbeutelと呼ばれる、ペンキなどが入った袋。
メーデーとかでも投げられる。。)がぶつけられているお店が。
ひぇー、何これ?と思ったら、そのお店でした。
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回りに居並ぶファッション系のショップの窓には
『私たちの地区にネオナチは要らない!』という署名運動の詳細や、
『ファッション・ゴーズ・トゥー・アンティファシズム』という呼びかけのカードが貼られています。
不動産屋さんから、すでに契約を打ち切られ
来月には立ち退きを余儀なくされているこの店。
新聞などでも、大きく報道され、すぐさま反対運動が起こる。
もちろん、
ネオナチが増えているとか、
若者が無関心だとか、そういうことは言われていますが
この、街の人の対応の早さ。
やっぱり、ドイツすごいな、と思った一瞬でした。


……昨晩、ともだちと歴史云々の話になったとき聞いた話。
『壁崩壊後に生まれた若者の6割(もちろん東出身者も含む)が、
ベルリンの壁を作ったのはアメリカ人だと思っているというアンケート結果が出た』
ひえーーーー!歴史で習うんじゃないの?と言ったら
学校以前に、親が教えることなんじゃない?と言われてしまいました。。
それにしても……。やっぱり若い人は歴史に興味が無いのでしょうか。
まあ、若くもない私の頭や情報も
そうとうひどいので、他人のことは言えませんけれども。。。
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by berlinbau7 | 2008-02-24 03:20 | ベルリンのこと

2008年の受賞者は……。。

怒濤のベルリン映画祭が、いよいよ終わりを告げます。
本日、日曜日はベルリナーレ・キノターク(映画の日)
ここのチケットは早めに販売が始まり、受賞作品などが放映される日でもあります。

さて、
今年のベルリン映画祭、受賞者は以下の通りです。
金熊賞、ベスト映画賞は
ジョゼ・パジーリャ監督 の『Tropa De Elite』でした!
コンペ作品の中でも、気になる、と書いたのに観に行かなかったのは
実は、某サイトで全部を見ることができたからです……。
もちろん映画館で見ると、また違うのでしょうけれども……。
公式サイトはココです。

銀熊賞/審査員賞は
エロール・モリス監督の『Standard Operating Procedure 』に。
監督賞は、
『There Will Be Blood』のポール・トーマス・アンダーソン監督に。
女優賞は、
『Happy-Go-Lucky』のサリー・ホーキンスに。
男優賞は、
『Avaze Gonjeshk-ha』のReza Najie に渡されました!

日本映画では、
新人監督賞に、『パーク アンド ラブホテル』の熊坂出監督が選ばれました!!
おめでとうございます〜!
また、若松孝二監督の『実録・連合赤軍』には、フォーラム部門の国際芸術映画評論連盟賞とNETPAC 賞(アジア映画支援の賞)が!おめでとうございます〜!
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これは昨晩、普通の上映でみたのですが、
ドイツ人観客からは『もっと政治的な視点を盛り込むべきだったのでは』というコメントがあったりして、監督はそれに『反省します』と映画の中の自己批判にひっかけて応えて会場が受ける場面も。
映画上映後の質疑応答も興味深かったです。
ただ、
あさま山荘事件も、連合赤軍も、言葉としても情報もある程度知っていても
事件としてリアルなものが無い私にとっては、
監督が撮りたかった気持ちなどはわかって、テーマも興味深いとは思いましたが
何か、今一歩入れないところがありました……。
リンチなどに至るシーンは、私はオウムの事件とかを思い出しました。
ドイツ人観客のコメントでも『セクトみたいだ』と言っていたひともいました。
一緒に行ったドイツ人は
『ああいった状況で、反論するひとが出てこないのは、ドイツでは無いだろうなあ……。あと、何で皆同じかっこうなの(ヘルメットに角棒、タオルまき)』と言っていました。えー、でも、ああいう状況でなくとも、例えば学校内のいじめとかを想定してみても、ああいう状況で反論できない感じって、わからないのか?


さて、
昨日見た『Perspektive deutsches Kino』のラストを飾るドキュメンタリー『Drifter 』は『Dialogue en perspective』賞を受賞。
これは、若いドイツとフランスの審査員たちが選ぶ賞です。
監督は、ベルリンの映画学校の生徒で、これが卒業制作だそうですが
とても静かな、しかし力強い映画でした。
詳しくは、また次で……。
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by berlinbau7 | 2008-02-17 18:56 | 映画、だいたいドイツ

『靖国』

李纓 (Li Ying)監督の『靖国』を見てきました。
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この映画は、ドイツの観客からどんな質問が来るか、
またそれに監督がどう答えるのかを聞いてみたかったのでプレス・スクリーニングではなく、通常の上映に足を運びました。日本の人もけっこう来ていました。

日本では4月12日から上映が決まっているということだったので、
内容などには触れなくても良いかと思いますが、
靖国についてのドキュメンタリー映画です。

ベルリン映画祭で毎日配布される、『daily from Berlin』に、
この映画が選ばれたフォーラム部門のディレクター、Ulrich Gregorの話が掲載されていました。
Gregor氏は、リー監督のポジションを、60年代に、カメラをナチ時代の暗い歴史の面へを向けようとした、ドイツの映画監督と比較しています。

映画は、
いまも靖国刀を作り続ける、最後の刀鍛冶、刈谷さんと
8月15日の靖国神社のようす、また小泉元首相(当時首相)のプレス発表などを
たんたんと取っています。
強い作為は感じられず、ただ事実を、そこにいる人を捉えています。

それだからこそ、私には、色々なことがとてもショッキングでした。
私は、この映画を見て初めて、
靖国神社のご神体が、『靖国刀』と言われる刀だということを知りました。
8月15日の靖国神社に、第2次世界大戦中の軍服を来た人たちが
あんなに沢山お参りにくることも、
夜間の神官たちの儀式も、まったく知りませんでした。
また、靖国神社に親族が祭られている人たちが、お願いしても
そこに祭ることを止めてくれないということ、これは漠然と知っていましたが…、
その理由も、知りませんでした。

これはもちろん、私が無知なのだと思うのですけれども、
私にとって、第2次世界大戦が形をなしたのは
ベルリンに来てからでした。
南京大虐殺については、中学の社会科でざっと習い(教科書には写真が載ってました)
当時の先生たちは、学校の行事の前に君が代の歌詞の内容や歴史においての意味を説明し
それが分かった上で、歌う人は歌いなさい、と言いました。
だから、色々なことは情報としては知っていたのです。
しかし、実感としてはなんだかぼんやりしたものでした。
大学で知り合った韓国人の友人たちが、8月、集まってお祝いをしているところに
ばったり出くわして、『何のパーティなの?』と聞いたら
『日本からの解放記念日』と言われたことが、きっかけとなりました。
戦いがあった時、誰かが殺されたら、殺した人がそこにいて。
どちらかが悪いとか、国のためだとか色々な理由や良し悪しうんぬんではなく
犠牲者がいる、もちろん、これは日本側の犠牲者も含め、中国、韓国の側にもいる
彼らにとって、どういう見え方だったのか、
そのことが、リアルに感じられた一瞬だったのです。
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ドイツ人の観客からは、色々な質問が飛びました。
中国人が、こういった映画を撮ることに対しての、日本の反応、
取ろうと思ったきっかけ、
そもそも、靖国刀の刀鍛冶に行きついたきっかけ、
刈谷さんをどうやって出演に口説いたのか、などなど。。
この映画には10年間がかかっているそうです。
やはり、なんども問題があり、カセットを取りあげられたりということもあったようです。
刀鍛冶は、なんども通い、質問をせず、ただ、刀を鍛えていくところを撮っていて
ぽつりぽつりと、彼のほうから口をひらいてくれたそうです。

『小泉首相が、靖国参拝をするということは、
ドイツに置き換えて考えると、アンゲラ・メルケル首相が
ニュルベルク裁判でさばかれた人の墓に行くようなものでしょ?』とはドイツ人の弁。
いやそうなんだけど、いや、そうじゃなくて、そうだけでもなくて、そこが難しいところなんだよ……。

私の言葉は、歯切れが悪くなってしました。
なんで、ドイツ人はこんなにスパスパッと言ってくるんでしょう。
ドイツ人の性格もあるとは思うのですが、戦争責任に対してのドイツの対応から来るも
のでもあるんでしょうか……。
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by berlinbau7 | 2008-02-15 09:10 | 映画、だいたいドイツ

『Kulinarisches Kino』

今回は、
ちょっとベルリン映画祭の本編を離れたお話を。
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『グルメ映画』、『Kulinarisches Kino』と題された、
映画を、食べて、飲んで、見て楽しもうというイベントです。

毎日、夜の7時半から、
ベルリン映画祭会場のポツダム広場からすぐのところにあるミュージアム、
マーティン・グロピウス・バウで『食』に関する映画が上映され、
その後、ミュージアム裏手に特設された、鏡張りのテント小屋で
その映画からインスピレーションを受けて作られた3皿のディナーを楽しんでもらう
というものです。

映画は、例えば、
ルイス・ブニュエルの名作「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」
NYの人気レストラン「Le Cirqueル・サーク」と、オーナーのシリオ・マッチオーニ氏と家族のドキュメント映画『テーブル・イン・ヘブン』
ステファン・ゲイツのヒット本「Cooking in the Danger Zone」の映画化。
ブラジル映画「Estomago」など。

今年の映画祭では、ルイス・ブニュエルのレトロスペクティブが行われていたので
プログラムは微妙に連動しているわけです。
ミシュラン一ツ星のコックたちが、映画のどこら辺をどうやって料理に昇華させているかが見所(食べどころ?)なわけです。

初日、同席したご夫婦は
『昨年、子どもたちが、スペシャルプログラムに行って、とても面白かったと言っていたから、今回は夫婦で、子ども達を寝かせてから来たの。』とおしゃっていました。
映画は『チャーリーとチョコレート工場』で、
チョコレート・フォンデューを楽しんだのだとか。そういうのも良いですね〜!
今年は子ども向けのプログラムは無かったようですが、
そのかわり、ぐっと食の内容や、トークショーのゲストがグレードアップされ、
49ユーロというお値段にみあった、グルメなイベントになっていました。

例えば、
『ブルジョワジーの密かな愉しみ』から
ベルリンの一ツ星レストラン、『クアドリガ』のシェフ、ボビー・ブロイヤー氏が
メニューを作った、オープニングの日には、
スローフードの会長、カルロ・ペトリーニ氏とフェラン・アドリア氏が登場。
もう、カルロ・ペトリーニ氏、最高!
『スローフード』というから、のんびりしたおじさまなのかと思ったら大間違いで
ジェスチャーを交えて、飛ばしていました。
しかも、話す度に、通訳さんに『私の言っていることは、簡単じゃないぞ。ちゃんと伝えているんだろうな、お前!』とすごい顔で耳を澄ましているので、通訳さんもたじたじ。一生懸命通訳しようとするあまり、ペトリーニ氏とジェスチャーまで同じになって
いたのが、笑えました。(自分が同じ立場だったらすごいプレッシャーだと思いますが、他人事だから笑える……)

次の日には、シリオ・マッチオーニ氏が招待されていたのですが、
病気ということで、息子さんが登場。
インタビュワーは、ドイツで有名なTVコック、アルフレッド・ビオレック氏。
前回、桃井かおりさんをインタビューした時は、ゲイシャについての質問を繰り返していましたが、今回はなかなか良く、盛り上がっておりました。

個人的には、もっと、食と映画の関係を深めた話とかをしてもらっても
面白いかなあとは思うのですが、ディナーパーティ&映画として、なかなか楽しめるイベント。大人のカップルが多いのにも、うなづけました。

また、22時からは別の映画が上映されます。
ファスビンダー監督の多くの作品でカメラマンを務め、料理が趣味だいうミヒャエル・バルハウス氏が、イタリアのポレンツォにある食科大学の学生と、トリノにある世界初のスローフード・メガ・スーパーマーケット「イータリー」に潜入したドキュメント映画なども。『食』のいろいろな面に切り込んでいて面白いですね。

来年も機会があれば、ぜひ足を運んでみたいイベントです!
詳細に興味のある方は、ぜひ、3月発売の『料理王国』をご覧頂ければ嬉しいです!
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by berlinbau7 | 2008-02-14 23:44 | 映画、だいたいドイツ

『Sag mir, wo die Schoenen sind』

昨日は、素晴らしいドキュメンタリー映画を見ました。

毎年、ドキュメンタリー映画をけっこう見る機会があるのですが
いつもなかなか見応えがあり、楽しめます。
『事実は小説より奇なり』という、部分にひかれているのか
それとも、作り込み過ぎた映画が苦手だからなのか、
ついついプログラムから選ぶ時、ドキュメンタリーを選びがちです。

昨日パノラマ部門でプレミア上映された『Sag mir, wo die Schoenen sind』は
旧東ドイツ下のライプチヒで、壁が倒れた1989年に行われた
『ミス・ライプチヒ』を決定するミスコンの出場者たちの、その後を追う、という映画でした。
当時、ライプチヒの美術大学の学生だった写真家のGerhard Gaeblerは、
20人の参加者を、モデルポーズで撮り、さらに彼女たちの職場で撮影し、
何故参加したか、などの短いインタビューをする、というプロジェクトを行っていました。その写真やインタビューを交えながら、18年後の今、彼女たちはどこにいて、何をしているのかを撮りおろしたドキュメンタリーです。
映画の中には9人の女性が登場します。
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(c)InternationaleFilmfestspieleBerlin
当時は路面電車の車掌で、現在は郵便局で働いている人。
『月曜日のデモ(1989年、9月、ニコライ教会から始まった自由のためのデモ)は
すごかった。参加したかって?もちろんど真ん中で体験したわよ。電車がデモ隊に囲まれて進まなかったんだもの』

当時は、ザルツシュタンゲ(塩気のある細いスナック菓子)の工場で働き、現在はライプチヒのホテルでメイドさんをしている人。
『シングルマザーで2人の子連れで。東の時代は仕事があったけど、壁が壊れたら、首になったわ。』

当時から今まで助産婦さんをしている人。
『(昔の写真を見ながら)ミスコンに出ようというひとが、こんな毛むくじゃらの足をしてることよね(笑)壁が倒れてアメリカに行ったら、皆がすごい目でみるのよ。友達がドイツで買ったエピレディ(除毛用の機械)を使おうと思ったら、ドイツとワット数が違うので全然動かなくって……』

現在はベルリンとドゥバイでPRエージェントとして幅広く活動している人、
チューリッヒで、インテリアデザイナーとして活躍している人、
離婚問題を抱えて悩んでいる人……。

監督のGunther Scholzは、東独の出身。
『壁崩壊、東西ドイツ統一はものすごく大きな出来事だった。もうそれから18年も経っているなんて信じられない。
それから始まった、第2の人生。この第2の人生、ということがこの映画のキーワードとなった』と
プレミア上映後のインタビューで語りました。
ミスコン参加者20人のうち、18人がみつかり、そのうち何名かは取材OKが出ず、
数名は、撮影したけれど、編集の時点で使わなかったのだそう。

9人の女性たちの、第2の人生。辛いことも、楽しいことも。
壁が倒れたこと、東独のありかた、良いところも悪いところもあわせて
淡々とカメラは彼女たちの言葉、姿を追っていきます。
個人的には、彼女たちのザクセン訛りがまた良くて!ポッドキャストで聞けるサイトがありますので、興味がある方は探してみて下さい。ラジオ、Deutschlandradio Kulturの音源です。映画のタイトルで検索するとでてきます。

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プレミア上映には、4名の女性達が登場。
割れんばかりの拍手で迎えられたのでした。
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by berlinbau7 | 2008-02-13 23:49 | 映画、だいたいドイツ

『夕日向におちるこえ』〜 Higurashi

本日は、映画そのものは1本だけ。
フォーラム(若手監督作品の中でも社会的なテーマを扱った作品が多く取りあげられる部門)に招待されていた、廣末哲万監督の『Higurashi(邦題は、夕日向におちるこえ)』を見ました。
高橋泉監督作品の『むすんでひらいて』は見逃したので、
チケットを手に入れて見に行こうと思っています。

さて、この『ひぐらし』、私はすごい映画だと思いました。
ぞくぞくして、この監督の他の作品をもっと見てみたい!!と思いました!!

最初の10分かそれくらい、まったく会話も説明する言葉もない。
音は料理の音やドアの音だけ。
小さなアパートの廊下にあるらしいカメラは、
細い廊下の向こうに、料理を作っている50代くらいの女性を映し出します。
料理がまだほかほか湯気をたててるうちに、ピッとラップをかけ
何かをメモし、バタン、と外に出る音が。
きっ、とドアが開き、ジャージ姿の若者が出てきて、皿からラップを剥がし
ずるずるとそばをすすり始める……。
麺をすするズルズルっ、ズズっ、という、ドイツではあまり聞かない(ドイツ人はすすらないから)音が響き渡る中、タイトルがゆっくりと出てきます。

カナカナカナカナ、カナカナカナ……。ヒグラシの声がひびくなか
ちょっと不安定な感じで、てくてくと歩く、細いシルエット。

お弁当屋さんでパートをしている母、
国家試験に落ちたあと家で何をするでもなく過ごしているらしい27歳の息子。
メモ書きだけでコミュニケーションを取っているこの2人の関係が描かれます。
すごいのは、『関係を描く』のに、関係にスポットが当たっているのではないこと。
2人の一人語りとか、心の中の言葉とかも出てこない。
ただ、起こったことが、口から発された映画の中に出てくる。
そして綿密に張り巡らされた小さな事柄が、最後のワンシーン、言葉になって発される。
お母さんに感情移入して見ていたので最後、私の口からも思わず同じセリフが漏れました。

ゆったりとストーリーを紡いでいるように見えるのですが、
なぜか、とてもハラハラしながら画面を見つめていました。
ぴりぴりと張りつめたものが、どこかでプチッと切れて怖い物が吹き出してきそうな感じがして。

そして、いやな感じを描くのがうまい。
息子が見る悪夢で、国家試験に受かった友達(?)なのかな?が出てくるのですが
そいつの口にご飯のたべかす?何か白い物がついているんです。
それにだんだんズームアップされてきて……。

プレス・スクリーニングのあと、
私の後を追いかけて来た人がいました。『日本人?どう思う?この映画どう思う?』
日本映画や、日本を描いた上映のあと、こういうことがよくあります。
日本人から見て、どう見えるのか、ということを聞きたいのでしょう。

その人は、この映画を素晴らしいと思ったのだけど、
英語字幕がよくわからないところがあったのだ、と話し始めました。
私は字幕は読んでいなかったのですが、確かに難しいかな、と思ったところはありました。
まず、キーワードとなる『ヒグラシ』がドイツには居ない。
というかドイツ人の多くは『蝉』を知らないのです。夏に蝉が鳴かない国なので……。
背景に聞こえるカナカナカナカナ……という音がなんなのか、
また、あの音に感じられる哀愁のようなものは、多分、伝わらないのかもしれない。
それから、電話ボックスに小さな紙を貼るバイトをしている人がいる。
日本人なら、ああ、あのチラシね、ってすぐわかるけれど(映画では裏面しか見えない)
ドイツ人(以外も)わからないよね。。。
新聞とってー、1ヶ月で良いから、洗剤付けまっせ、と来る新聞勧誘のシステムもないし。
(ドイツは個人宅訪問形式ではなく、町中で2週間とかの無料お試しを勧め、
その契約が終わるころ、契約どうですか、というお伺いの手紙が来るシステム。)
わからないから、映画の良さが失われるということでは無いんですが、
説明するのは野暮だし、でもその辺が分かった方が面白いかなとか、
この辺が海外で映画を上映するところの難しさなのかなーと思いました。

夜は、グルメ映画部門で
ルイス・ブニュエル監督の『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』と
映画にちなんで作られた、3皿のコースメニューを♪
フェラン・アドリアが来たので、ものすごいプレスの数で大盛況でした。
食事も美味しくて、トークショーも面白く、とても楽しめました。昨年よりずっと良かった!この部門はもっと頑張って面白い試みを色々やってほしいです!
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by berlinbau7 | 2008-02-12 10:46 | 映画、だいたいドイツ

『Football Under Cover』

本日は、また『Perspektive deutsches Kino』で始めました。

『Football Under Cover』。
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(c)InternationaleFilmfestspieleBerlin

ベルリンはクロイツベルク地区の女子サッカーチーム『BSV Al-Dersimspor』。
その一員であるMarlene Assmannがテヘランから来たAyat Najafiと知り合ったことからイランの女子ナショナル・チームとの試合を計画し
テヘランに出向き、実際に試合をするまでを撮りおろしたドキュメンタリー映画です。

まず、始めにビザを取ることから始まります。
何らかの援助がなければ、ビザがおりないということで、
彼らはFIFAに電話をしてみたりするのですが、まずドイツ側からは何の援助も得られず。
『素敵なアイデアですね』と褒められて、それっきり。
なんとかこの計画を実現させようと、MarleneとAyatはテヘランに向かい
ナショナルチームのメンバーと出会い、了承を得て、
試合の日程まで決めて、勇んでベルリンに帰国。
しかし、2005年の11月に華々しく開催される予定だった試合に不穏な影が。
ビザは下りず、試合の日程は延びるばかり。
戦争になるのではないか、核兵器開発の報道などもあり、ベルリンの選手や選手の家族たちは『本当にイランに行って危険じゃないのか』と不安になり、スポンサーたちは次々とこのプロジェクトから手をひいてしまいます。
2006年4月、試合の日取りが決定。
しかし、ビザは下りず。電話を何度しても『あと2週間かかる』って、試合は来週なのよ!
と必死になるMarlene。
飛行機のチケットを予約し、荷物を詰め、チームはイランを目指して飛び立ちます。
空港でなんとかビザをもらい、ギリギリセーフ。
しかし、試合はポスターを貼って宣伝することも禁止され、球場はボロボロ……
さあ、いよいよ試合開始の笛がなった!

………

試合の結果や内容は、まあどうでも良いんです。
クロイツベルク・チームの中にもトルコ人のメンバーが何人かいて、
パワフルなストライカー、ススは『私もムスリムだけどさ、父方はすっごく厳しいし
母方はオープンなんだ。実際イランに行ってみてどんな感じか、頭に布を巻いて試合する感じがどんなんか知りたいよ』と目をきらめかせました。

イランでの女子サッカーチームの出で立ちもすごかった。
長袖、長ズボンに靴下をかぶせ、頭にはぴっちりと布を巻いて髪の毛を隠した上で
伸縮性のある帽子のような物をかぶり、試合中にも布が取れないようにします。
ちなみに、試合会場に入れるのは男性だけ。
クロイツベルクチームの監督も、通訳圏監督でもあるAyatも男性なので
入れてもらえず、こっそり壁の隙間からのぞいている所を警官にみつかり、注意を受けたり。

イランの女性観客が、試合中、叫び、腕を振り上げ、ウェーブを作ると
『踊りたいならば、ディスコに行って下さい、静かに』とアナウンスが。
『男たちは好きなかっこうで、サッカー場で好きなように観戦してるのに』
『この国では私たち女性には半分しか人権がない』と叫び出す女性たち……。

イランの映画で『オフサイド・ガールズ』というのが
昨年のベルリン映画祭のコンペに出て、こちらも良かったですが、
『Football Under Cover』はドラマチックになりすぎず、
起こったことを追う中で出てくるちょっとしたシーンが、どきっとしたり、
わくわくしたりして、そのさじ加減にドキュメンタリーの良さを感じました。

クロイツベルクチームの人たちも、いい感じで、応援したくなりました!
映画の最初の方に出てくる、試合のシーンでシュートが決まったり、
キーパーのナイスストップなどでは会場がどよめき、口笛を吹いている人も。
上映後の拍手もすごかったです!私もいままで見た中では一番好きだったので、沢山拍手をしました!

その後は、フォーラムの映画を2本。
1つは日本映画の『パーク アンド ラブホテル』。
主人公の艶子を演じた、りりィさんはじめ、女優さんどの方も生きている感じ、作られた感じがなくて良かったです!
13歳の女の子が書いた書き置きというのの文字がすっごく達筆だったのが妙に印象に残りました。今時の子は字がうまくないはずだ、と私が思い込んでいるせいか、それとも私の字が汚すぎるからか。。近年、日本語を書く機会がどんどん減っているので、どんどん日本語を紙の上に書くことができなくなりつつあります。
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by berlinbau7 | 2008-02-11 08:13 | 映画、だいたいドイツ

『Teenage Angst』

本日は、
疲れ気味だったので、ドイツ映画(短編&中編)1つに絞って見てまいりました。
『Perspektive deutsches Kino』の中で、映画学校の生徒の作品を上映する試みです。

1作目は『Robin』。
施設から家族の待つ自宅に戻された、8歳の男の子、ロビン。
若くて疲れ気味の母親、アル中気味の父親、生まれたばかりの妹。
タイトルが始まる前の子どもたちのはやし唄みたいのも怖く、
ロビンが双眼鏡でのぞく、焦点がブレ気味の映像が不安をかきたて、
映像としても、よくできたものだと思いました。
ただ、20分の短編、私には、この映画を撮りたかった意味みたいなものが伝わってきませんでした。もう、ただひたすら辛くて。
映画は楽しいものでなくっても良いんです。でも……こんな話は新聞でさんざん読んでるよー。。と思ったら、プログラムに監督は、実際に起こった事件から発想を膨らませたとありました。悲惨な現実を悲惨に描くだけでなく、私はもうちょっと何かが欲しかったなと思いました。

2作目は『Teenage Angst』。
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(c)InternationaleFilmfestspieleBerlin

こちらも、辛かったです。『ティーンエイジャーの不安』
Angst はドイツ語だと思っていたんすが、英語でもAngst なのですね。
ニルヴァーナの『Serve the Servants』の頭にもこの言葉が出てきます。
プラシーヴォにもこのタイトルの曲があります。題材としてはけっこうあるのかな。でも俳優陣がすごくて迫力ありました。

舞台はお金持ちが沢山集まる山間の寄宿舎。
寄宿舎と言われるとすぐ、『11月のギムナジウム』『トーマの心臓』なんかを
思い浮かべてしまう私ですが、
しょっぱなから
休日を終えて帰って来た生徒たちに、アルコールチェック(飲酒運転をチェックするような器具で)と、ドラッグチェック(尿検査)をやらせてて、驚きました。
そりゃ、オスカーも煙草は吸っていましたが……。
(ドイツ人には『これくらいの年齢が一番はめを外すんだから、当たり前じゃない』と一蹴されました………)お揃いのジャージーは着ていましたが、特に制服も無し。

湖畔の、街から隔離された、エリート寄宿舎(とプログラムにはあり、
たしかに生徒が住んでいる部屋などを見ると、モダンなインテリアでかなり豪華な雰囲気)で
同室の4人、Dyrbusch、 Bogatsch、 Konstantin 、そして Leipnitz。
夜中に学校を抜け出し、学校からほど近い薮の中にある『別荘』に行き、
お酒を飲んだり、『モラルなど忘れちまえ』と毎晩、ばかばかしいお遊びにふける。
コカインをきめて街に遊びにでかけた4人。
Dyrbuschが、夜道を急ぐバーのウェイトレスさんに暴力をふるい、
Leipnitzが止めたに入ったことから、『友達』だった4人のバランスが崩れだす。
『自分たちは友達だ』と信じ切って、両方の間に立とうとするKonstantin の影で
Dyrbusch、 Bogatschの暴力はエスカレート。
密告ることもできず、迷うKonstantinが心を決めた時、
先生に呼び出されたLeipnitzは……。

いじめられるときの恐怖、人をいじめるときの焦燥感、恍惚感、戻るタイミングを失ってエスカレートしていく感じ。学校やクラスという逃げ場の無い中で、方向を見失った力だけが渦をまくあの感じ。もう、ティーンエイジャーじゃなくて良かった、と心から思いました。
どっしり重いものを持たされたようになって、映画館を出る間際、
『この映画って、つまりはずっとマゾだったLeipnitzが、
一転して、ドミナになるというお話なんだね』と言っている人が。
えっ、そういう解釈なの?
同じ映画をみても、色々な感想がでるものだということを感じた一瞬でした。
昨日の『Berlin - 1. Mai 』も、
紋切り型で面白いところゼロ!これをオープニングにしたのは、『これ以降は良くなるしか無いという意味か』とまでハードに批評している記事もみかけましたし……。

そして映画館を出た所で、
Dyrbusch役の俳優、Niklas Kohrt(Knallhartにも出演していたよう。今はドイツ劇場の俳優でもある)
とKonstantin役の俳優、 Franz Dinda(ドイツTV賞で奨励賞などを受賞 )が
おう久しぶりー!と再会を喜んでいるところに遭遇。なんだかホッ。
ちょっと気分が落ち着いて、帰路についたのでした。
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by berlinbau7 | 2008-02-10 06:11 | 映画、だいたいドイツ

『Nacht vor Augen』『Berlin - 1. Mai 』

私の個人的なベルリン映画祭第1日だった昨日は
ドイツ映画2本で始めました。

まずは、
『Nacht vor Augen』。
ドイツの連邦国防軍の1人として、アフガニスタンに配備されたのち、
シュヴァルツヴァルトの実家に帰って来た25歳の青年、ダーヴィットの話。
自殺テロを行おうとした人間を取り押さえ、22人の兵の命を救った、として
メダルを受けたダーヴィット。
しかし、アフガニスタンでした何かに不安を覚え、眠れない夜が続く……。
ダーヴィットの半分・弟(ダーヴィットの母と義父の子ども)であるベニと
話したり、サッカーのトレーニングをしたりする中で、
彼の不安や、かかえているもの、心の揺れが表現されていくところはは面白かったです。
ベニが高所恐怖症を克服するシーンでは、私も高所恐怖症なので、
めまいがしました。

それから、
今年は沢山ドイツ映画をみるぞーと思って
チェックを入れていた『Perspektive deutsches Kino』のオープニング映画。
『Perspektive deutsches Kino』は今年で開催7回目となる、若いドイツ映画を紹介する部門。
ベルリナー・シューレなど、ドイツ映画のトレンドを見る上でも興味深い部門です。

さて、この『Berlin - 1. Mai 』はその部門のオープニング映画であり、
また今年のベルリン映画祭で初めてのベルリンを舞台にした映画でした。

ベルリンのクロイツベルクで行われる5月1日、メーデーのデモを背景に
3つのストーリーが絡み合い、その日の最後に集結していく。
自分がベルリンに住んでいるから、その雰囲気が楽しめていいとか
そういったことをさっぴいても、とても見応えがある映画でした。
プレス上映で見たのですが、最後すごい拍手が来ました。

主人公は
●メーデーのデモを鎮圧する警官隊の1人で、妻の浮気に悩むウヴェ
●クロイツベルクの集合住宅に住み、メーデーのデモを『警官たちをやってやる』イベントだと理解している
トルコ人の男の子、ヤヴース
●田舎から、『なんかすごいらしいぜ』とメーデーを目指して来た2人の高校生、ヤコブとペレ

監督は4名。
それぞれ、『5月1日の朝にはじまり』『最後はUrbankrankenhaus(クロイツベルクにある救急病院)』で終わるストーリー。
3つのエピソードは、1つが終わると1つが始まる、というような進み方ではなく
時間の経過を追って、絡み合います。

俳優さんには、ゲーリッツァー公園で、高校生2人が出会うパンクのお姉ちゃん役に
『4分間のピアニスト』で囚人の女の子を演じたハナ・ヘルツシュプルング、
ヤブースのお兄ちゃんに、『Knallhart』や『Schwarze Scharfe』で強烈な印象を残した、ベルリン生まれのトルコ人俳優、Oktay Oezdemirなど。

サイトはこちら。いくつかのシーンを見ることができます。
http://www.myspace.com/berlin_1mai

本日13時、コロセウム、20時30分より、シネマックス3で上映があります。
テーマ的に興味があるひとにはぜひ!オススメ。

全然本筋には関係ないのですが、ヤブースの弟の子がかわいくて!
彼がミュズリーらしきものを食べて遊ぶシーンで彼が大写しになったら、回りから『うわーかわいぃ!』と声が聞こえました。
あと、警官のベンヤミン・ヘプナーのお腹がすごくて驚きました。
ズボン脱いで横になってるのに、プリンッと……。ある意味すっごくリアル。
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by berlinbau7 | 2008-02-09 17:43 | 映画、だいたいドイツ