『靖国』

李纓 (Li Ying)監督の『靖国』を見てきました。
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この映画は、ドイツの観客からどんな質問が来るか、
またそれに監督がどう答えるのかを聞いてみたかったのでプレス・スクリーニングではなく、通常の上映に足を運びました。日本の人もけっこう来ていました。

日本では4月12日から上映が決まっているということだったので、
内容などには触れなくても良いかと思いますが、
靖国についてのドキュメンタリー映画です。

ベルリン映画祭で毎日配布される、『daily from Berlin』に、
この映画が選ばれたフォーラム部門のディレクター、Ulrich Gregorの話が掲載されていました。
Gregor氏は、リー監督のポジションを、60年代に、カメラをナチ時代の暗い歴史の面へを向けようとした、ドイツの映画監督と比較しています。

映画は、
いまも靖国刀を作り続ける、最後の刀鍛冶、刈谷さんと
8月15日の靖国神社のようす、また小泉元首相(当時首相)のプレス発表などを
たんたんと取っています。
強い作為は感じられず、ただ事実を、そこにいる人を捉えています。

それだからこそ、私には、色々なことがとてもショッキングでした。
私は、この映画を見て初めて、
靖国神社のご神体が、『靖国刀』と言われる刀だということを知りました。
8月15日の靖国神社に、第2次世界大戦中の軍服を来た人たちが
あんなに沢山お参りにくることも、
夜間の神官たちの儀式も、まったく知りませんでした。
また、靖国神社に親族が祭られている人たちが、お願いしても
そこに祭ることを止めてくれないということ、これは漠然と知っていましたが…、
その理由も、知りませんでした。

これはもちろん、私が無知なのだと思うのですけれども、
私にとって、第2次世界大戦が形をなしたのは
ベルリンに来てからでした。
南京大虐殺については、中学の社会科でざっと習い(教科書には写真が載ってました)
当時の先生たちは、学校の行事の前に君が代の歌詞の内容や歴史においての意味を説明し
それが分かった上で、歌う人は歌いなさい、と言いました。
だから、色々なことは情報としては知っていたのです。
しかし、実感としてはなんだかぼんやりしたものでした。
大学で知り合った韓国人の友人たちが、8月、集まってお祝いをしているところに
ばったり出くわして、『何のパーティなの?』と聞いたら
『日本からの解放記念日』と言われたことが、きっかけとなりました。
戦いがあった時、誰かが殺されたら、殺した人がそこにいて。
どちらかが悪いとか、国のためだとか色々な理由や良し悪しうんぬんではなく
犠牲者がいる、もちろん、これは日本側の犠牲者も含め、中国、韓国の側にもいる
彼らにとって、どういう見え方だったのか、
そのことが、リアルに感じられた一瞬だったのです。
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ドイツ人の観客からは、色々な質問が飛びました。
中国人が、こういった映画を撮ることに対しての、日本の反応、
取ろうと思ったきっかけ、
そもそも、靖国刀の刀鍛冶に行きついたきっかけ、
刈谷さんをどうやって出演に口説いたのか、などなど。。
この映画には10年間がかかっているそうです。
やはり、なんども問題があり、カセットを取りあげられたりということもあったようです。
刀鍛冶は、なんども通い、質問をせず、ただ、刀を鍛えていくところを撮っていて
ぽつりぽつりと、彼のほうから口をひらいてくれたそうです。

『小泉首相が、靖国参拝をするということは、
ドイツに置き換えて考えると、アンゲラ・メルケル首相が
ニュルベルク裁判でさばかれた人の墓に行くようなものでしょ?』とはドイツ人の弁。
いやそうなんだけど、いや、そうじゃなくて、そうだけでもなくて、そこが難しいところなんだよ……。

私の言葉は、歯切れが悪くなってしました。
なんで、ドイツ人はこんなにスパスパッと言ってくるんでしょう。
ドイツ人の性格もあるとは思うのですが、戦争責任に対してのドイツの対応から来るも
のでもあるんでしょうか……。
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by berlinbau7 | 2008-02-15 09:10 | 映画、だいたいドイツ


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