『夕日向におちるこえ』〜 Higurashi

本日は、映画そのものは1本だけ。
フォーラム(若手監督作品の中でも社会的なテーマを扱った作品が多く取りあげられる部門)に招待されていた、廣末哲万監督の『Higurashi(邦題は、夕日向におちるこえ)』を見ました。
高橋泉監督作品の『むすんでひらいて』は見逃したので、
チケットを手に入れて見に行こうと思っています。

さて、この『ひぐらし』、私はすごい映画だと思いました。
ぞくぞくして、この監督の他の作品をもっと見てみたい!!と思いました!!

最初の10分かそれくらい、まったく会話も説明する言葉もない。
音は料理の音やドアの音だけ。
小さなアパートの廊下にあるらしいカメラは、
細い廊下の向こうに、料理を作っている50代くらいの女性を映し出します。
料理がまだほかほか湯気をたててるうちに、ピッとラップをかけ
何かをメモし、バタン、と外に出る音が。
きっ、とドアが開き、ジャージ姿の若者が出てきて、皿からラップを剥がし
ずるずるとそばをすすり始める……。
麺をすするズルズルっ、ズズっ、という、ドイツではあまり聞かない(ドイツ人はすすらないから)音が響き渡る中、タイトルがゆっくりと出てきます。

カナカナカナカナ、カナカナカナ……。ヒグラシの声がひびくなか
ちょっと不安定な感じで、てくてくと歩く、細いシルエット。

お弁当屋さんでパートをしている母、
国家試験に落ちたあと家で何をするでもなく過ごしているらしい27歳の息子。
メモ書きだけでコミュニケーションを取っているこの2人の関係が描かれます。
すごいのは、『関係を描く』のに、関係にスポットが当たっているのではないこと。
2人の一人語りとか、心の中の言葉とかも出てこない。
ただ、起こったことが、口から発された映画の中に出てくる。
そして綿密に張り巡らされた小さな事柄が、最後のワンシーン、言葉になって発される。
お母さんに感情移入して見ていたので最後、私の口からも思わず同じセリフが漏れました。

ゆったりとストーリーを紡いでいるように見えるのですが、
なぜか、とてもハラハラしながら画面を見つめていました。
ぴりぴりと張りつめたものが、どこかでプチッと切れて怖い物が吹き出してきそうな感じがして。

そして、いやな感じを描くのがうまい。
息子が見る悪夢で、国家試験に受かった友達(?)なのかな?が出てくるのですが
そいつの口にご飯のたべかす?何か白い物がついているんです。
それにだんだんズームアップされてきて……。

プレス・スクリーニングのあと、
私の後を追いかけて来た人がいました。『日本人?どう思う?この映画どう思う?』
日本映画や、日本を描いた上映のあと、こういうことがよくあります。
日本人から見て、どう見えるのか、ということを聞きたいのでしょう。

その人は、この映画を素晴らしいと思ったのだけど、
英語字幕がよくわからないところがあったのだ、と話し始めました。
私は字幕は読んでいなかったのですが、確かに難しいかな、と思ったところはありました。
まず、キーワードとなる『ヒグラシ』がドイツには居ない。
というかドイツ人の多くは『蝉』を知らないのです。夏に蝉が鳴かない国なので……。
背景に聞こえるカナカナカナカナ……という音がなんなのか、
また、あの音に感じられる哀愁のようなものは、多分、伝わらないのかもしれない。
それから、電話ボックスに小さな紙を貼るバイトをしている人がいる。
日本人なら、ああ、あのチラシね、ってすぐわかるけれど(映画では裏面しか見えない)
ドイツ人(以外も)わからないよね。。。
新聞とってー、1ヶ月で良いから、洗剤付けまっせ、と来る新聞勧誘のシステムもないし。
(ドイツは個人宅訪問形式ではなく、町中で2週間とかの無料お試しを勧め、
その契約が終わるころ、契約どうですか、というお伺いの手紙が来るシステム。)
わからないから、映画の良さが失われるということでは無いんですが、
説明するのは野暮だし、でもその辺が分かった方が面白いかなとか、
この辺が海外で映画を上映するところの難しさなのかなーと思いました。

夜は、グルメ映画部門で
ルイス・ブニュエル監督の『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』と
映画にちなんで作られた、3皿のコースメニューを♪
フェラン・アドリアが来たので、ものすごいプレスの数で大盛況でした。
食事も美味しくて、トークショーも面白く、とても楽しめました。昨年よりずっと良かった!この部門はもっと頑張って面白い試みを色々やってほしいです!
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by berlinbau7 | 2008-02-12 10:46 | 映画、だいたいドイツ


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